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行くところもすることもないと譲らない日向に洗濯と掃除を任せて、逸也は午前中、ジムで汗を流して過ごした。おかげで昨日の酒は抜けたが、心のなかに生まれて育とうとしている小さな芽は萎れる様子もなく。
ジムに行く逸也へ「二日酔ですよね? アラサーのくせに恐ろしいほど体力余ってますね」と憎まれ口を叩く日向に、「俺のこのスーパーな肉体を維持するためには努力が必要なの」と答えた。すると夕べの逸也を思い出したのか、点火されたトーチのように一瞬で顔を赤らめた日向がたまらなく可愛らしかった。
「やべぇ。ニヤける」
マシンのグリップを高速でプルダウンしてしまい、隣で同じように背筋を鍛えていたあかねに「イッちゃん飛ばしすぎ! 筋肉壊れるわよっ」と注意されてしまう。やべぇ。
「最近のイッちゃん、なんだか楽しそうよねぇ」
シャワーをざっと浴びてロッカーで帰り支度をしていると、追い付いてきたあかねにそんなことを言われて逸也はうろたえた。
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