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二階の住居をピカピカに掃除したあと、日向は調理場で大鍋を磨いていた。
裏口のドアが開閉される気配がして、リズミカルに階段をのぼる音がする。ほどなくしてドドドと駆け下りてきた逸也が調理場の引き戸を乱暴に開けた。
「日向っ。あー、いた……」
「は?」
息せき切ってる逸也の様子に首をかしげると、照れたような笑みを返された。なんだ?
「いや、なんか窓ガラスまでピッカピカにしてあるから不安になっちゃって」
「なんですか、それ?」
「書置きとかあったらどうしようって……」
立つ鳥跡を濁さずって、昭和の演歌か。なんの心配をしているやら。
「なんでそういう発想に走るんですか。イチさんって何かにつけて結構バカですよね?」
嬉しさを隠すと憎まれ口が出てしまう。
「バカ上等。つうか、日向こそ休みなのに働いちゃって仕事バカだよな」
「別に……、仕事とは思ってませんけど」
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