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「もうすぐだもんなぁ。楽しみだな」  普段からゆるく下がり気味の目尻が更にやわらかく緩む表情に、日向の心臓は冷たい水をパシャリとかけられたようにきゅっと縮んだ。 「あ、ねぇ、トキタにイケメン従業員さんがきたって噂だけど、もしかしてそちらの方? はじめましてー。吉岡の家内の幸恵でーす」  逸也の大きな体からひょこっと顔を出すようこちらに目を向けられて、日向はペコリと頭を下げた。唇を固く結んでいたことに気づき、顔をあげる瞬間に笑顔を作る。 「津村日向です。イチさんとタクさんにはお世話になりまして」 「わあ、タクちゃんの話よりずうっとイケメン! ていうか可愛い!」  逸也や巧より少し年下に見えるがたぶんアラサーだろう。けれどもキャッキャとはしゃぐ姿は女子高生のようで、それがおかしく見えないのはおっとりとした容姿と雰囲気のせいかもしれない。 「おにいちゃん、イッちゃんのおともだち?」

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