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 日向のパーカーの裾を引っ張って見上げてくる兄弟と、それをニコニコ見つめる幸恵の瞳がそっくりだ。物怖じしない人懐っこさは巧に似ている。「血が繋がっている」から。  固まってしまった日向に、幸恵がすまなそうに眉を下げて「ほらほら、ヒナちゃんが困っちゃうから」とまとわりつく兄弟を引き剥がすのを逸也がおかしそうに見ている。  目線で助けを求めれば、逸也は笑いを噛み殺しながら小さい方を抱き上げた。 「空也ー、今日は保育園お休みかー?」 「うん。えんそくでいっぱいあるいてがんばったから、きょうはおやすみなの」 「ママがイッちゃんちのおかずでおひるごはんにしようってー。おれ、コロッケとメンチとマカロニのやつにするんだ」  兄の大地が脚によじ登ろうするから逸也がよろけた。幸恵が慌てて支えようとして笑いが起こる。あたたかい光景に日向だけ入れない。  逸也と兄弟の顔立ちはまったく似ていないのに、血が繋がっているみたいに見えた。まるで本物の親子みたいに。

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