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逸也が出かけてしまったあと、日向はそのまま毛布に包まって少しウトウトしていた。
浅い眠りの中に、逸也の笑う顔が見える。男らしい眉の下の目元が三日月のように細まって、口角がやわらかく上がっている。好きな表情。でも隣には頬笑む幸恵がいて、その隣にははしゃぐ子どもたち。反対隣に艶然としたアヤカの顔を見て飛び起きた。
遠くで救急車の音がする。心臓がバクバクしていた。
外はもうすっかり夜の色で、時計を見れば夕食時だった。逸也はまだ帰っていない。
立て続けに見たおかしな夢のせいか、ひどく心細くなって二階へ駆けあがった。ソファの逸也の定位置に腰を下ろして膝を抱える。
「晩めし作るって言ってたのに……」
「ちょっと出かける」の「ちょっと」がどの程度の時間なのか、「出かける」先がどこなのか。まったく見当がつかなくてオロオロしてしまう。
不穏に騒ぐ胸を沈めようと、日向は包丁を握って台所に立った。
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