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7―10
「イチさんのせいじゃない」
いつかしてもらったように、頭を抱えて引き寄せた。肩に乗ったぬくもりをやわやわと撫でながら何度も言った。
「誰のせいでもない。だからイチさんのせいじゃない」
「……うん」
「イチさんが気づいたから塚田さんは病院に運んでもらえたんです。亡くなってしまったのは本当に残念だけど、でもイチさんに看取ってもらえた。孤独死じゃなかった」
「日向……」
腰に回された腕の震えがおさまるまで、日向は逸也の背中をさすり続けた。
部屋はほどよく暖まっていて、ハヤシライスはいい香りがして、けれども悲しい夜だった。
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