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8―10

「でもっ……」  目元の朱色は頬や耳にまでも伝染し、こわばった口許から弱々しい言葉がこぼれた。 「お、俺は、イチさんの部屋でイチさんをオカズにしてた。この意味わかるでしょ? もうこれ以上恥ずかしい思いしたくないです。だから……」  バックパックと一緒の脱出は難しいと判断したのか、日向はするりと肩ひもから腕を抜くと再びドアノブめがけて立ち上がった。 「こら待てっ」  逸也はバックパックを片手で放り投げると、鍵を開けようとする日向の手首を捻るようにつかむ。その手を振りほどこうと暴れる日向を、後ろから抱き締めた。 「なあ、俺はさ、嬉しかったんだよ」  びくんと伝わった震えと体温。 「最初はさ、誰をオカズにしてんだって嫉妬したんだけどさ、俺か! ってわかったときの喜び、わかる?」 「……なに言ってるのか自分でわかってます? 俺、男ですよ? 血迷わないでください」  ほら、やっぱりな。唇の尖った日向に逸也は愛しさが止まらない。

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