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「うん、俺も」  逸也の肉厚な唇が落とす口づけは妄想の中より百倍官能的で。こめかみから頬、首筋へとなぞっていくその唇が恋しくて欲しくて、日向はやわらかなくせ毛をかき抱いた。  喉の渇いた旅人が砂漠で見つけた果実をむさぼるように、日向は逸也の舌を吸う。甘い果汁のように溢れた唾液を嚥下すれば、腹のなかに生まれた熱い塊が暴れながら急降下する。 「あ、あ、ぁああ、イチさ、……ぁ、いくっ」  下腹部へと落ちた熱は大きく膨らんで、制御する間もなく逸也の手のなかであっけなく弾けた。 「ご、ごめんなさ……ぃ」 「なんで謝んだよ」 「だ、だって……」  一度官能の底へと沈められた羞恥が一気に浮上してきた。日向に汚された手のひらをティッシュで拭く逸也の、怒ったようにきつく結ばれた口元と寄せられた眉間に、沸き上がるのは罪悪感だった。    男の自分に、逸也は幻滅したのではないだろうか。苦しそうな険しい視線とぶつかって肩が震えた。 「ひなた……、あのな、ひくかもしんないんだけど……」 「……はい」 「お前に挿れたい。我慢できない」
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