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ヤオイダから帰ると逸也が配達の準備をしているところだった。塚田のおばあちゃんの一件から、逸也は以前から考えていた弁当のデリバリーを始めることにしたのだ。とりあえずは夕食のみ、あけぼの団地限定で。
「んじゃ、いってくるな」
弁当や惣菜のパックが入った保温バッグをよいせっと担いで、巧の店から借りた配達用バイクにセットする。希望があれば吉岡酒店の商品も配達することで、バイクの使用料はチャラにしてもらった。
団地へ配ったチラシのレイアウトやアイディアは、アヤカが提案したものだった。
ライバルだと思っていたアヤカが、実は広告代理店に勤めていた経験があり、女性の恋人がいると知ったときの驚きときたら。そして仲睦まじく見えていたことが、このデリバリーの相談だったということ。
振り返ってみれば、ひとり空回りしていた自分は逸也以上の嫉妬深さで恥ずかしくなる。
逸也のバイクと入れ替りのように、大地と空也を連れた幸恵がやってきた。せり出したお腹はいまにもはち切れんばかりで、幸恵に会うたびついまじまじと見つめてしまう。
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