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新聞屋のバイクの音で逸也は目を覚ました。遮光カーテンを閉め忘れた窓が、日の出寸前の静かで透明な青に染まっている。
頬にあたるサラサラした髪にひとつ口づけて、逸也はもたれた頭からそっと腕を抜いた。ピクリと一度まつ毛が震えたが、やわらかなカーブを描くまぶたの縁は、縫い合わされたように開く気配がない。
「だよなぁ。昨日のお前、激しかったもんなぁ。燃えつきるわなぁ」
昨夜の日向の痴態を思いだし、逸也の瞳にこれから昇ってくる太陽のような、あたたかい色がじんわりと浮かんだ。けれどすぐに立ち込めた暗雲に、ご来光はあっさりと姿を隠されてしまう。
「やっぱり、……だよな」
何度も抱いているのにベッドのなかでもそれ以外でも、触れると恥じらう日向が初々しくて可愛らしくてたまらない。そんな恋人に、ゆうべは散々イニシアチブを取られて驚いたのだけれども。
「あの営業マン」
恥ずかしがるイコールセックスが嫌い、ではないようで、逸也の欲望に無理なく応えてくれる身体に、過去の『誰か』の存在を感じずにいられない。
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