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9―18
自分も結婚していた過去があるし、その前にはそれなりの恋があった。日向と同じ年の頃には合コンの数だけお持ち帰り、なんてバカなレコードを競ったりもしていた。から。
日向の過去についてどうこう言う権利なんて一ミリもないけれど、どういうわけかこの年下の恋人には、嫉妬や甘えたが発動してしまって、困る。
「今まで誰に対してもそんなことなかったのになぁ……。お前は特別なんだよな」
真っ直ぐ伸びた先がほんの少し丸い鼻梁をなぞり、たどり着いた唇へ中指でそっとキスをした。
みずみずしくて美しい寝顔を独り占めしている幸せに、過去を詮索するような子供じみたマネはすまいと心に決める。いつの間にか曙色に変わった窓から、朝を告げる最初の光が差し込んでいた。
あと数分もしたら鳴り出す目覚ましを解除して、逸也はもう少しこの愛しい時間に包まろうと、日向の体温に頬を擦り寄せた。
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