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「イッちゃんは? 一緒じゃないの?」 「別に俺たちコンビ芸人じゃないですから」 「ふふっ、そうよねぇ。ヒナちゃんだってたまにはソロ活動したいわよねぇ。イッちゃんは心配みたいだけど。あれってちょっと親心みたいなのも混ざってるわよねぇ」  親子のように扱われるのもなんだかなぁと思いながら、アヤカへ曖昧な笑みを返してグラスの泡をちびちび舐めた。  玉ねぎとベーコンとピーマンがジュワーっと跳ねる音のあとに、ケチャップが熱せられた香ばしい香りがする。あかねの作るナポリタンは、昭和も家庭の味も知らない日向なのに、どこか懐かしい味がするから不思議だ。  ナポリタンが出来上がる間、高見沢のことを思い出して小さくため息をついた。あれから姿を見せることはないが、油断は出来ない。縁もゆかりもないこのあけぼの市で偶然再会するなんて、砂のなかに落としたゴマ粒を見つけるぐらい難しい確率なんじゃないか。 「……はぁ」  せっかく逸也に想いが通じて、穏やかで平和な生活を手に入れたというのに。

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