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 高見沢から離れたいという気持ちが『捨てる』ということになるのなら、自分を捨てた親と同じことをしようとしている罪悪感に動けなくなってしまう。  メッキがすべて剥げた高見沢は、ギャンブルで借金を抱え、ヒモだった女性のマンションから追い出された張りぼてエリートだということを知ったときには、日向のなけなしの貯金は食い尽くされ、職場の洋食店にまで高見沢を探して取り立て屋が現れるようになっていたのだ。  そこが限界だった。お世話になったオーナーに迷惑をかけることはできなかった。退職届と詫び状を店のポストへ落とし、日向は高見沢から逃げ出した。

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