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気になって表へ回ってみると、三件隣のクリーニング屋の前にはすでに野次馬の輪ができている。さすがというかなんというか、薬局のおばさんとおしゃべりする勝田さんの顔が見えた。
「あらあらあら、イッちゃん、大変よぉ。田地(たち)さんちに空き巣ですって」
「えっ?」
パトカーの後ろに停まった同じカラーリングのワンボックスから、紺色のジャンパーにキャップをかぶった鑑識官が降りてくる。
「あらー、ドラマと一緒ねぇ」
盛り上がる勝田さんたちから離れて店内を覗くと、夕べは真っ赤な顔でカラオケマイクを握っていた田地の親父さんが、捜査員らしき人物の前で真っ青になっていた。「防犯カメラは? ああ、設置してない?」そんな声が聞こえてくる。
「やっぱり防犯カメラをつけるべきだったのよねぇ」
勝田さんの言葉に逸也は眉を寄せた。警察はどこかの防犯カメラに犯人が映っていないかと軒並み聞き込みをしに来るだろうが、商店街のどの店舗にもそんな設備はなく、トキタに捜査員がやって来てもなんの役にもたてないのは申し訳ないが。
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