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「あの野郎の言う通りにしておきゃ良かったっていうのかよ」
歌舞伎役者のようにスッキリと整った男の顔を思い出すと、うっかりゴーヤを口にしてしまった気分になる。年配客にある程度人気なのでトキタでもチャンプルーとして提供することがあるが、逸也自身が口にすることはないゴーヤ。栄養価はわかっていても嫌いなのだ。同じく防犯システムの重要性をわかっていても、奴からは買わない。ゴーヤと一緒だ。
「イチさん?」
騒ぎの大きさを気にして出てきた日向の肩を、野次馬からかばうように押すと調理場へと二人して戻った。「田地さんとこに空巣だってよ」と伝えれば、驚いたように大きく開かれた日向の瞳が、何か思いついたようにチラリと揺れた。
「ん?」
「あ、盗られたのは現金ですか?」
「レジの釣り銭だってさ。たいした金額でもねぇだろうに、捕まったら一生を棒にふっちまうのになぁ」
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