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「どういう意味っすか?」
怒りを圧し殺した逸也の低い声に、八百屋は慌てて太い腕をぶんぶん振ると誤魔化すように下手くそな作り笑いを浮かべた。
「いや、親のない子はさぁ、こう、素行に問題あったりするもんだからさ」
「親がいたって問題起こすやつは山ほどいますよね? この商店街にだっていたような気がしますけど」
八百屋の息子が昔、駄菓子屋のばあちゃんの目を盗んで万引きを繰り返していたクソガキだったことは、逸也と同世代の間では有名な話だ。
「まぁアレだ。老婆心ってやつだ。気を悪くしたならすまなかったな」
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