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 どこから出た噂なんだか。怒りは収まらなかったが相手は商店街の大先輩で、逸也はありったけの分別をかき集めて尖りそうになる言葉を飲み込んだ。お口直しのあかねの店に日向がいたことに動揺して、大人げない態度をとってしまったことは反省だけれども。  それにしても……。この客足の悪さはどうしたことか。まさか夕べの八百屋の話が勝手に独り歩きしているのだろうか。噂の出所がどこなのか、巧なら知っているかもしれない。今夜呼び出して相談してみようか。  そんなことを考えていた逸也は難しい顔をしていたようで、日向が心配そうに覗きこんでいる。 「あー、なんか暇だなぁ。お前、夕方まで二階で休んでていいぞ」 「俺は大丈夫ですよ。イチさんこそ二階で昼寝でもしてくれば?」 「えー、ひとりでベッドに転がったりしたらさぁ、思い出しちゃうじゃん、いろんなこと」  「なにを言ってるんだ」と眉をひそめた日向の腰に腕を回して、「日向のアンナコトとかコンナコトなんかを思い出すと、うずうずしちゃうから」とささやけば、耳まで真っ赤にしてぶぅと膨れるのが可愛い。

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