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 翌日から逸也は、閉店後に夜回りで出かけるようになった。帰宅はいつも深夜近くて、昼間の逸也は疲れて見える。店にきたお客さんにはいつものように愛想よく接しているけれど、その反動か、店のこと以外では極端に口数が減った逸也に、「もっとふたりで過ごしたい」なんて甘えたことは言えない日向だった。 「イチさん、今日はヤオイダの三倍デーですけど、漂白剤とティッシュとごみ袋のほかに買ってくるものありますか?」 「いや、俺が行ってくるから日向は店番しててくれ」 「でも……」  いつもの日向なら「やだなー。まだヤオイダのバイトに焼きもち焼いてるんですか? 子どもかよ」なんて軽口が出るというのに、目の下に隈を浮かべた逸也の顔を見たらそんな言葉は引っ込んだ。代わりに強引になる。 「イチさん疲れてるみたいだし、俺が行ってきますよ。買い物したらすぐ戻りますから」  返事を待たずにポイントカードをつかむと、コートを羽織ってスニーカーに足を突っ込んだ。

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