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あけぼの商店街から離れる。トキタ惣菜店から出ていく。逸也と別れる。二度と、二度と会わない。
想像すればものすごく怖くて、半身をもがれるような喪失感に飲み込まれてしまいそうだ。それでも、逸也とトキタ惣菜店を守るために自分が出来ることは、この町から消えることだと思えば、すくんで動かなくなる足も前へ出た。
わずかな間だったけれど、この商店街を居場所に出来た夢のような時間を思い出しながら、トキタの灯りを見つめて歩いた。金物屋の店先に、立ち話をする勝田さんの姿がある。
「あらでもそんな大金、お宅に置いといて大丈夫なの?」
「そうなのよ。だから明日の朝一番であけぼの信金から送金するつもり。振り込み手数料がかかっちゃうけど仕方ないわよねぇ」
金物屋の奥さんは一人暮らしの大学生の息子へ、米や野菜なんかと一緒にトキタの惣菜まで送ってしまう大雑把な人だ。たぶん数百円の手数料を惜しんで、生活費としての現金を仕送りの荷物へ忍ばせるような吝嗇家でもあるんだろう。そして勝田さん同様おしゃべりだ。
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