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 気づかれないよううつむいて通りすぎようとしたのに、おしゃべりしながらも次のネタを探す勝田サーチに引っ掛かってしまったのか、目があった。とたんにピタリとおしゃべりが止む。「あらー、ヒナちゃん、おつかい? 頑張ってねー」なんて、下手くそな小芝居みたいな口調。    会釈だけして足を速めた背中に、「……ねぇねぇ、あの子が?」というひそめた声が、鋭く尖った小石のようにピシピシと当たったけど、日向はまっすぐ前を向いてトキタまで歩いた。涙が出そうだったけど前を向いて歩いた。

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