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「疲れたか?」  朝日のスポットライトを浴びたあけぼの団地は、眠りから目覚める前の大きな伸びをするように、くっきりと長い影を落として佇んでいる。逸也と日向の影ぼうしも、しっとりと朝露に濡れた舗道に仲良くならんで伸びていた。  幸恵の病院からの帰り道、いろんなことがありすぎた脳内は軽く飽和しかけていて、日向は無言でふるふると頭を振った。 「俺ら……、その、余計なことしちまったのか?」 「余計なこと?」 「うん、高見沢のこと」  手錠をかけられ警察の車輌に乗りこむ高見沢は派手な腕時計が哀しく思えるほど萎れた様子で、一度こちらに振り向いた顔は別人のように寂しく歪んで見えた。かつて好きだった男のそんな姿を見るのは辛かっただろう。 「あの人は俺のことなんか最初から好きじゃなかったんですよ。見栄をはって派手に遊んで着飾って、そういうことで過去の不幸せを上書きしてたんだと思います。俺をそばに置いたのも追いかけてきたことも、自分より不幸な人間を見て安心したかったからじゃないかな」

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