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「日向の悪い噂を流してたのもあいつなんだよな」 「うん。俺に罪を擦り付けるというよりも、ここで楽しく暮らしてる俺に嫉妬したんだと思います」 「楽しく暮らしてた、のに、出ていこうとしてた?」  右肩に背負った日向のバックパックを揺らして、逸也はうつむくほっりとした横顔を覗きこんだ。 「だ、って……、俺はイチさんに嫌われたかと」 「は?」 「夜回りに出始めたころからずっと……、こっちを見てくれないし、さ、さわってももらえなかったし……」 「あー……、だってお前、布団敷いてひとりで寝ちゃうしさ。高見沢が現れてお前の様子はおかしいし、ああこれは元カレのがいいのかな、拒否られてんのかなぁって思ったら怖くてさぁ。なんせ変態扱いされてたし、俺」 「本気で変態だなんて思ってるわけないじゃないですか。それにほんとうに変態だとしても、そんなところだって全部っ……」 「全部?」  言葉に詰まった日向を逸也が見おろしてくる。瞳で揺れている甘い光に、また泣きたくなる。 「全部だいすきですっ」

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