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おまけ―1

『ヒナちゃん、早く早くっ』 『は、はいっ』  がんばってはいるが、いつも通りに運ばない足元にイライラしつつ、日向は駅前目指してあかねと走っていた。  普段は閑散としているあけぼの駅前ロータリーには特設会場が設置され、煌々と照らされたステージ周りは「こんなに人口いたんだ?」と思うほどの人だかりだった。  今日は年に一度の『あけぼの市民夏祭り』の最終日。毎年さほど盛り上がらないこの祭りに、今年は商工会が秘策を投じた。 『はい、ではこれから、あけぼの市民イケメンコンテストファイナリストが衣装換えしてお目見えです! いよいよ最終審査となりますが、どなたの頭上に第一回あけぼのイケメン王者の栄冠は輝くのでしょうかっ?』  蝶ネクタイをつけたクリーニング屋の親父さんの流暢な司会で、ファイナリストたちが登場を始めた。まずはヤオイダの店長の名前が呼ばれ、観客から「てんちょー!」とかけ声があがる。

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