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第13話 やな奴

「え?白羽、同じってどういうこと?」 僕は驚いて思わず体を起こした。 バカ野郎って白羽に押し倒されたけど…。 「いや、俺の家さ、そりゃ小さい時は楽しかったし、母さんが俺がバレーで点を決めたらすっごく喜んでくれてたことも思い出した。 でもさ、俺が寝たきりになったとき俺と同じぐらい大事… いや、もっと大事なやつが出来ただろ?」 大事なやつって…。 「白羽の弟…のこと?」 白羽は何も言わず頷く。 「ほら、まだ5歳になったばっかしだしさ。目を離した隙にどこにいくかわからない年頃じゃんか? ましてや俺がこんなことになってメチャメチャ大事にしてる。 分かってる。俺も兄貴になったし、道徳的なことは小学生でも年はもう高校生だ。割りきらねぇとならねぇ。 でもさ、 やっぱり辛ぇよ。 5年も寝たきりだった俺をほったらかして弟に付きっきりで、 親父も単身赴任だかなんだかしらねぇけど来てくれねぇし、 目が覚めて、勉強して、リハビリして、 早く家族のとこに戻らなきゃって俺は思ってもみんなはこんな俺のこともう必要ないんじゃないかって…。 俺…なんか…もぅ、生きてる意味ないんじゃないかって…。」 気づかなかった。 僕は白羽のことを何も見ちゃいなかった。 白羽の家族ならまたいつものように暮らせるって勝手に思い込んでた。 今は白羽も僕と同じなんだ…。 「母さん今日も来ねぇのかなぁ…。 」 白羽の目はいつのまにか濡れていた 今度はゆっくり体を起こして白羽の柔らかい髪の毛を触る。 白羽の少し骨ばった手を握る。 「僕ね…。さっき白羽の病室にいったんだ。そしたら居たよ。君のお母さん。 何か編み物してた。 もしかしたらまだいるかもしれないから 早く白羽は病室にもどりなよ。 僕を心配してここまで連れてきてくれてありがとう。 僕はもう1人で平気だしさ。 正直ここまでずっと看病とか面会とか僕はしてきたのに 白羽はいつまでたっても僕のこと思い出してくれないこらもういいよ。 そろそろ自分の体に専念する。」 「は、やな言い方。呆れたわ。」 「いいからはやく行けよ!知らねえ奴の看病せずに、自分を待ってくれてる奴を優先しろよ‼鬱陶しい」 「は?散々人の病室に入り浸りやがって、鬱陶しいのはこっちの台詞だよ!」 じゃぁ って白羽は足早にお母さんに会いに行った。 「本当にいいのかい?」 先生はそう訪ねる。 「いんですよ。もう彼の病室に面会に行きません。自分の体治さないと、そろそろ夏には試合ですから。」 そう。 これはどうしようもない運命。 ヤマアラシのジレンマ 相手に近づけば近付くほどお互いを傷付ける。 どちらかが我慢しないとどんどん傷付ける。 だったら僕が我慢すればいい。

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