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第18話 暖かい
「おーい!せいいるー?」
僕が転校してきた何ヵ月も経ったころ
今日も白羽は学校が終わったあとに僕のクラスのとこに来てた。
「どうしたの?しろう」
「今日は俺んちでゲームしようぜ!」
今日は久し振りのしろうのお家。
楽しみだな。
「うん!」
僕はその気持ちを包み隠さず顔に出して白羽のお家にお邪魔した。
「お、おりゃ!くそ!負けるかぁ‼」
「僕だって‼」
「うわっ‼ちょっとやめろ‼そこは‼」
ドカァァン
大きな音たてて白羽が駆使するキャラクターが華麗に場外に消えてった。
「やったぁ‼今日はこれで10連勝だ♪」
「くそぉ。なんで負けるんだよぉ。」
「ゲームだけは白羽に勝てるみたいだね」
「嬉しそうに言うんじゃねぇよ」
コンコン
白羽の部屋のドアからノックが聞こえた。
「入るわよぉ。みんなでおやつ食べない?」
「食う食う!手をいっぱい使うから腹へったよ。」
そう言って入ってきた白羽のおばさんの両手には1枚のお盆
その上にはオレンジジュースとたくさんのドーナツがあった。
「いいんですか?」
「いいのよ。ささ、みんなで食べましょ」
「え?母さんも食うの?」
「何よ。いけないの?」
「僕はおばさんとも一緒に食べたい!」
「あら、嬉しいわ」
この時のおばさんやおじさんは優しかったな。
僕の家では感じられない暖かさが溢れてた。
それが夏でも暑苦しくない居心地のいい暖かさ。
「白羽の家族は仲良くていいね。」
そう呟いたときには
白羽のおばさんはもう晩御飯の支度で部屋には居ない。
「なんで?
お前んちは違うの?」
違う…のかな?
でも白羽の家のように暖かくはなかった。
「僕が家にいてもいなくても変わらない。欲しいものはくれる。何時に家に帰っても怒られない。
なんだか、僕の家は暖かくないんだ。」
ときどき思う。
僕は別に家にいてもいなくても
お父さんやお母さんには気づかれないんじゃないかって。
「そんなことないと思うぜ。」
「どうして言い切れるの?」
「だって俺の家はしょっちゅう喧嘩してるよ。
それでも次の日は仲直りしてる。
お互いに反省してお互いに謝る。
思ったことを口にする。
お前もさ、もっと喋ってみろよ。
言いたいこといっぱい言ってみたら
少しはわかると思うぜ。」
今思えば小学3年生が言う言葉じゃないなって笑えるけど
この時の僕は
白羽の言葉を信じようと思った。
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