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第19話 最低限

僕は急いで家に帰ってリビングに行った。 「ただいま‼」 僕はいつもより大きな声で挨拶した。 「いきなり何?頭に響くからやめてもらえないかしら。別に言わなくてもドアの音でわかるわよ。」 あぁ、冷たい。 白羽の家はあんなに暖かいのに 冬の寒さよりも染み渡る冷たさ。 この差はなんだろうか。 「ごめん、なさい。」 「ご飯出来てるから一人で食べて片付けしてちょうだい。」 「わかりました。」 結局聞けなかった。 お父さんは支店の多い企業の営業部。 だから色んな店の事務所に飛ぶ。 今日も帰りは遅いみたいで 無駄に大きな机に座った僕は向かいに並ばれた空っぽのグラスと器を見ながら 暖かいお味噌汁すら冷たく感じる晩御飯を食べていた。 お風呂に入ってさぁ寝ようと思っても 白羽に言われたことが気にかかって なかなか寝れない。 一度お水を飲んでトイレに行こう。 そしたら落ち着くかも。 そう思ってベットから起きて階段を降りる。 すると先ほど僕が一人で食べてた机には二人で座っているのかご飯をつつくような音と話し声が聞こえた。 「なんであの子がいるのかしら。」 「今更なに言ってるんだ。 お前が子供欲しいって言ったんだろ? 俺はお前がいればそれで良いっていったはずだ。」 「なんでかしら。私は子供が産める体じゃないから子供を持つ親が羨ましかったのかしら。 でも違ったわ。手がかかるだけ。 よく他の親は面倒が見れるわよね。」 「自分自身で産んでみないと分からないもんじゃないのか? だが、最低限のことはしてやれよ。 俺にも何をすればいいのか分からないんだからな」 小学生の僕には全く理解できない難しい会話。 だが、今ならわかる。 僕のお父さんとお母さんは 血の繋がらない誰かだった。

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