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「ん、ん…何…?」
「お前はもう俺のだ」
「…あ、ぅ…何でもええけど…」
だって俺、あんたのちゃうし。
大和のやし。
「はよ上から退いて」
「何で」
「部屋片付けるのぉ…あ、でも、ちょっと寝てから」
眠たくなってきて目を閉じる。
俺の上から若頭さんが退いて隣に寝転んだ気配がして、そっと寝返りを打って若頭さんの足の上に左足をかけて、若頭のお腹の上に左腕を置いて抱きついた。まるで若頭さんが抱き枕みたい。
でも若頭さんは怒らんと俺の髪を撫でてくれる。
ほんまは優しい人なんやろうけど、まだそれがわからへんから、何も言わんと俺はそのまま静かに眠りに落ちた。
「琴音」
「ん…」
体を揺らされて目を開けたら「もう夕方になる」と言いながら俺の額にキスをした。
「うん…ああ、そうや、部屋片付けないと」
「それはもういい」
頭を撫でられて今度は唇にキスされる。
この人、キスすんの好きやなぁ。
「よくないやん。部屋汚いもん」
「後で部下にやらせる。」
「そんなんあかん」
起き上がって、片付けようとしたけど、捨ててええんかわからんかったやつを重ねた紙をピッと指さす。
「あれ、自分で選別して」
「何だあれ」
「捨ててええかわからんかったから」
若頭さんの肩をパンっと叩けば渋々動き出してペラペラ紙に目を通して、結局全部いらねえってゴミ箱に捨てた。
「なら何でその時その時で捨てへんの」
「…わかんね」
俺の所に戻ってきて、俺の後ろに座り後ろから抱きしめてくる。まあ、背もたれみたいにもたれられるから全然いいけど、なんか、大和を裏切ってる感じがして嫌になる。
「はぁ…」
「ああ、そういえばお前」
「何?」
「俺のこと名前で呼べるように練習しろ」
「はぁ?あんたはあんたでええし、よくて若頭さんやろ」
「怒るぞ」
俺を抱きしめる力が緩まったかと思えば、無理矢理後ろ向かされてキスされる。
「名前で呼べ、じゃないとこのまま酷く抱くぞ」
「…わかったわかった、宗一郎」
「そうだ」
「でもさ、宗一郎って長いから、宗ちゃんって呼んでええ?」
そのまま体を若頭さんの方に向けて、首に腕を回し甘えるように体を寄せる。
「…許す」
「ありがとう」
宗ちゃんの肩に頬を付けて力を抜く。
宗ちゃんは俺の背中をポンポンと撫でて「まだ眠いのか?」と聞いてきた。
「眠い」
「寝るなよ」
「わかってる」
やって俺が寝てもうたら、話し相手がおらんで寂しいもんな。
「なあ宗ちゃん、ここの庭って綺麗やんな」
「組員達が手入れしてるからな」
不意に思い出したこの組の中庭。
さっきも組長さんの所に行く時見たけど、花がいっぱい咲いて可愛かった。
「あれ見に行きたい」
「ん」
宗ちゃんが俺をお姫様抱っこしたまま立ち上がる。
自分で歩けるのに、何でこんな甘やかしてくれんの。
「お前、花好きなのか?」
「自分の事は名前で呼ばせるくせに、俺はお前ですか」
「…琴音」
「ふふっ、うん、俺結構お花とか好きやで。小さい時に花編みたいなん、しやんかった?」
「した事ねえ」
宗ちゃんが何だそれって眉を寄せるから、後で教えてあげようって宗ちゃんの腕の中でそう思った。
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