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夜になって、部屋でソファーに座りながらテレビを見て酒を飲んでると「寝るぞ」と宗ちゃんに呼ばれ、強く腕を引かれる。 「んー…」 「立て」 「…抱っこしてぇ」 カラカラと空き缶が転がる。 その本数はいつもよりちょっと多くて…、どうやら酔ってもうたみたい。 「嫌だ」 「じゃあ、知らんもん」 腕を振り払って自分でも何が楽しいのかは知らんけど、ヘラヘラと笑いながらテレビを見てると突然画面は黒になって自分の顔が映る。 振り返って宗ちゃんを見たらリモコンをポーン、とどっかに投げてもうた。 「ちょっとぉ、俺見ててんけど」 「知らねえよ、さっさと寝るぞ」 「…早く、抱っこ」 面倒臭そうな顔をしながらも、俺に向かって両腕を広げてそこで待ってる。宗ちゃんの胸に飛び込むと「お前、面倒臭い」と言って俺の背中をポンポンと撫でる。 「ん、ふふ…」 「ベッド行くぞ」 「やだ」 顔を上げて宗ちゃんにキスすると「ガキか」と小さく笑って、それから額をコツンと合わせてくる。 「お前、明日になったらこの記憶、忘れてくれてっかな」 「ううん、俺、忘れへん」 「…そうかよ。でもまあ、いいや」 そう言って俺の体を抱き上げてベッドに連れて行く。そうして俺を優しく抱きしめたかと思うと今までとは違う、ただ甘いキスを与えてきた。 「ん…」 「お前のこと、好きだよ」 「…もう1回、言って…」 「好きだ」 「ふふ…俺なぁ、知ってんで、宗ちゃんが…好きな人に意地悪したくなる、の」 「……………」 「あのな、宗ちゃんが俺にすること、いつも大抵痛いけど、でも、たまに優しいねん」 宗ちゃんにそう言って体をスリスリと寄せると髪を撫でられて「悪い」と謝られる。 「わかってるんだ。そんなこと、しちゃいけねえんだって」 「うん…やから、ちょっとずつさ…あー…キスして」 なんか、たまらんくなって宗ちゃんにそう言うと小さく笑ってキスをしてくれる。 ほんまに、いつも容赦ないくせに優しい時はとことん優しいから甘えてまう。 そうしていつしか俺は、宗ちゃんのことが好きになって、その後に待っていた悲しくて苦しくて、そんな出来事が起こるなんて思ってもなかった。

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