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翌日にはいつもの調子に戻ってる宗ちゃん。 昨日の記憶はあんまりないようで「寝すぎた、頭痛い」と椅子に座りながら溜息を吐いている。 「そーうーちゃん!」 「あ?」 そんな宗ちゃんの膝の上に向かい合わせで座って首に腕を掛ける。 「好き、大好き」 「…何だ急に」 「宗ちゃんは?俺のこと好き?それとも愛してる?」 「…愛してる」 嬉しそうな表情、隠せてないで。 自分からキスしたら宗ちゃんは、目を細めて笑って、俺の後頭部に手を持っていき優しく撫でながらキスを返してくれる。 舌を絡めあって、唇が離れてから、もう一回ちゅ、と触れるだけのキスをした。 「今日は機嫌いいんだな」 「昨日な、宗ちゃんと俺って、ちょっとだけ似てるかもしれへんって思った事があってさ」 「似てる?」 「なあ、昔のこと教えてくれへん?」 宗ちゃんの胸に触れながらそう言うと、眉間に皺を寄せて「昔の事って?」と聞き返してきた。 「例えば、両親共忙しかったから、一人やった、とか」 「…それは、お前の話か?」 「ううん。俺は、両親共世間体を気にする人やったから、俺自身のことは考えてくれんと、自分らのええようにされてただけ」 「…辛いな」 「まあ、その時はね」 宗ちゃんの優しい声で、ちょっと心が震えた気がした。 「俺は…お前が言った通り、親が忙しくて、ずっと一人だったよ」 宗ちゃんの肩に頬を付けて宗ちゃんの話を聞く。 トクトクなる宗ちゃんの心臓の音に段々と落ち着いていく。 「その頃は寂しいって、純粋に思ってたんだよ。でも仕事だから仕方ない、親とは遊んだりできないけど、組員がいるし、いいやって」 「うん」 「でも、それは今思えば我慢してたんだと思う。そうやって自分に言い聞かせるんだ、そしたら寂しくないだろ?…けどな、それに気づいた時すげぇ、悔しくなったんだ。」 「悔しく?」 「ああ。…俺より、仕事を選ぶんだってな。うざいだろ」 「うざくなんてないよ。やって、大抵の子供はそうやろ」 宗ちゃんの髪が額にあたって擽ったい。

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