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「宗ちゃん」 「何だ」 「これの意味がわからへん」 暇やったから、宗ちゃんに借りた本を読んでた。 でも所々意味がわからへん。この本を書いてる人の伝えたい言葉は、きっといろんな場面に散らばってるのに、それを受け取ることが出来ひんくて、イライラする。 「これ、結局のところ何が言いたいん?」 「それは自分自身で考えることだろ」 「考えた結果が今やねん。なあ、何が言いたいん、これ」 宗ちゃんは本のタイトルを見ると「ああ、それか。それは難しいな」と2、3回頷いた。 「俺もまだわかってない。だから、何回も読んでる。その度に答えが違うんだよ」 「それってええ事なん?」 「さあ?」 今はさほどその話に興味が無いようでパソコンで何か仕事をし始めた。 「宗ちゃん、他の本も読んでいい?」 「ああ」 見かけと、その態度によらず、読書好きな宗ちゃんの部屋にはたくさんの本が並んでる。ジャンルはバラバラやけど、殆どの本の主人公が若干異質やった。 「何でここで海に飛び込んだんかな」 「何でだと思う」 「さあ…でも、なんか、許されへん思いがあったんかな」 宗ちゃんと本について話をするのは楽しい。 それは宗ちゃんの思考が今よりももっと理解できるかもしらんから。 「宗ちゃんは?」 「俺は…ただそいつががむしゃらに相手の事を大切に思ってたからだと思う」 「そう?そんな描写あった?」 「いや、ただのイメージ」 俺にはない思考を宗ちゃんは持っていて、逆に宗ちゃんは俺の思考を持っていない。それがぶつかりあって初めて知れる事にただ単純に嬉しく思うんやと思う。 「宗ちゃんって、ほんまは凄い綺麗な考えしてるもんな」 「何だそれ。」 「伝えるのが苦手なだけやねんもんな」 「…ちょっと黙れ」 少し恥ずかしそうに顔を歪めて俺を睨む。 その顔、全然怖くないで。

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