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出会いは少女マンガのようなものではなく2

「...」 鼓が学校に来ると必ずするのは、まず自分の下駄箱に入っている靴の確認だ。前は砂が入っているだけだったが、最近は画鋲や虫、動物の死骸などが入れられている。 (今日は......画鋲。昨日はネズミだったよね。ネズミ触れるだなんてすごい。むしろ褒めてあげたいかな) 的外れなことを思いつつ鼓は下駄箱に入った画鋲を―――辺りに撒き散らした。 このいじめは、鼓を崇拝している人でも止めることはできない。それは、いじめの首謀者が理事長の息子だからだ。理事長は鼓の手の内だが、息子はどうにもできず鼓も手を焼いている。 いじめを指摘しようものなら、理事長に退学させられてしまうため誰も言わないのだ。 (...権力バカどもめ) 心の中で舌打ちした鼓は自分の上履きを履き綺麗に画鋲を避けながら教室に入った。画鋲を撒き散らしたのは、いじめ首謀者への嫌がらせである。 (怪我しろ、ばーか) 鼓が教室に入ると水を打ったように静まり返った。 「...おはよう?」 「鼓くんおはよう」 「ああ、涼川くんおはよう」 「おはよー」 だが、静かだったのはどこへやら、鼓が挨拶するとみんなはすぐに鼓の周りに集まった。首謀者―鷲野がいなければ教室は比較的平和で、鼓に突っかかる者はいない。 逆に鷲野がいると、非好意的な生徒が鼓に対しちょっかいをかけてくる。臆病者の集まりだと鼓は気にも留めていないが。 (こうやって挨拶してくれるけど...鷲野が来たら無視するくせに。ほんと、表面だけの関係って鬱陶し...) 鼓は常に笑顔だが、心の中では暴言をぶちまける癖がある。所謂(いわゆる)、腹黒。 「...はよー」 朝のHRを無視し、授業が始まる3分前くらいに鷲野は教室に現れた。すると今の今まで鼓と話していた生徒はみな各自の席に戻り、ほかの友人と喋り始めた。 鼓とは仲良くしたいが、鷲野には逆らいたくないという矛盾。 「あーあ、鼓は今日もぼっちなんだねぇ?可哀想だ、ほんとに」 卑下た笑いを蓄えて、鷲野は鼓に近づく。鷲野は鼓の反応を気にしている様子だが、本人は全く臆することなく淡々と言う。 「可哀想なのはどっちかな?自分の周りに本当の友達すらいないのに。みんな大体鷲野くんの家柄目的でしょ?」

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