6 / 435

出会いは少女マンガのようなものではなく4

大量の学食をお持ち帰り用に包んでもらい、食堂を足早に出た。鷲野と取り巻きが食堂に入ってきたからだ。 前までは食堂で食べていたが、鷲野らと一悶着あって以来鼓は食堂では食べないことにしている。 鷲野たちへの評価が下がろうとも全く気にならないが、問題を起こして先生からの評価が下がるのは嫌なのだ。 食堂を出た後鼓が向かったのは生徒会室。生徒会に入っているわけではない。鷲野と鼓が定期的に衝突するため、困り果てた教師陣が会議にかけた結果。二年にあがってから放課後以外使用されない生徒会室を特別に貸されることとなったのだ。 ちなみに、鼓が使っているのは生徒会室のスペアキーである。 鼓が生徒会室に入ると、まぁ当たり前だが誰もいない。両手に提げた大きな袋をこれまた大きなテーブルに置き、そして自身はソファーの真ん中に堂々と座った。 「重かった…」 食堂から持ってきた昼食を広げる。定食のお持ち帰りは弁当用のプラスチックケースに入れられて、よく見ると、定食とは関係のない果物が中に添えてあった。 (食堂のおばさん…優しい) 大量の学食がどんどんと胃の中に詰め込まれていく。ポテト、野菜、ハンバーグ、唐揚げ、スープ、―…。 「おいひぃ」 (もう…鷲野ほんっとにイライラするなぁ。いっそのこと理事長ごと消えればいいのに。理事長は一応手の中だけど…うざいし。事業で失敗しろよ。あー、嫌い嫌い大嫌い!!) やけ食いなだけあって、鼓の手が止まることは無い。小さい口だが、ハムスターのように口いっぱいに頬張り咀嚼している。そして、無くなればすぐに口の中に放り込む。 (…クラスの連中も見てるなら一言くらい言えるだろ。そんなに退学が嫌か、そんなにこの学校にへばりついてたのか。鬱陶しい!) 心の中で言っているのは、周りに誰かいた時に聞かれないようにするためだ。いてもいなくても、これは鼓のポリシーである。 ―...黙々(心の中は真っ黒)と食べる鼓の耳に、ふと、寝息が届いた。

ともだちにシェアしよう!