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出会いは少女マンガのようなものではなく5
辺りを見回すが、それらしい人影はない。だが、確かに寝息が―
「ぅー...」
今度は唸り声だ。それは生徒会長席の向こうから聞こえる。姿が見えないということは、床に寝っ転がっているのだろうか。途端、鼓は綺麗な顔に似つかぬ嫌そうな顔をした。
(誰か、いるんだ。うわぁ...最悪。ここで食べてたら色々言われるんだろうなぁ…それに、床に寝てるとかありえない)
鼓は食べ物を口に突っ込み逃げる準備を進めた(食べ物を置いて逃げないところが鼓らしい)。貧乏性のようだ。
「...わっ」
今度は生徒会長席の向こうからガタガタと音がする。袋に食べ終わった容器を突っ込んだ。
(ゴミ置いていきたいけど...…ダメだよね。後で生徒会に文句言われる。自由にさせろっての!)
妙なところで律儀だ。
袋に全てを入れ終え「ごちそうさま」を言い、さぁ逃げる準備が整った、あとは逃げるだけ―のところだったが、会長席の椅子がガタンと大きな音を立てて横転した。
「?!」
さすがに驚いたらしく、肩を揺らす。
「んぅ〜...」
(...むしろ、床で寝てるやつとか見てみたい。床に寝そべるとかありえない行動するんだし...やばいやつだったりして)
鼓は興味本位で、生徒会長席に近づいた。行儀が悪いと思いながらも、会長席の机に乗っかり下を見下ろす。
(あ、やっぱ寝てる…床にて寝てるとかよく出来るよね)
茶色い髪はワカメのようにもじゃもじゃとしていて、目元が一切見えない。よく見ればメガネをかけているようだが、それもギリギリ目視出来るほどだ。
「ふ、ぁぁあ〜...」
少しの間観察していると、謎の人物は鼓に気付かず、欠伸をしながら起き上がった。
「あーよく寝た...あ、れ?いつの間に椅子から転げ落ちてたんだろ。いたたたた...」
体を起こした、その拍子にパラパラと手に持っていた写真が落ちる。写真には――鼓が写っていた。しかし、どれもこれも、こちらを向いていない。
「あー...写真が...鼓くん可愛いなぁ」
「...」
普通、驚愕し背筋が凍るか気持ち悪がるか叫ぶかするだろう。が、そこは鼓である、どれにも当てはまらなかった。
(...あ、すとーかーだ)
驚くことも背筋が凍ることも気持ち悪がることもない。ただ、珍しいモノを見たな、程度の感覚である。
(え、いままでぜんっぜん気づかなかったんだけど…......ってか、すとーかーって、なに?)
鼓はストーカーについて疎い。
小さい頃から容姿のせいで誘拐や連れ込みはあったものの、ストーカーはなかったせいか、よく分からないのだ。
ストーカー=嫌がらせの付き纏い。それが鼓の見解である。天才がどこか抜けているというが、鼓はまさにそれだ。
「すとーかーさん、おはようございます」
なにを思ったか、ストーカーに声をかける鼓。異常なのはどちらだと言いたい。
「……だ、れ?…っぇぇえ?!」
ストーカーが、叫んだ。
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