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出会いは少女マンガのようなものではなく6
「つ、つつつ、つ、鼓くん…っ」
「名前知ってる…やっぱりすとーかー?」
ストーカーの顔は青ざめ見れたものじゃない。逆に可哀想に見えてくる。ストーカー知られ、しかもそのストーカーしている本人にバレるだなんて。
「お、お昼食べに来たんだよね?…ごめん、邪魔したかな?」
「お昼食べに来たことすら知ってるんだ……ねぇ、殴らないの?」
鼓の衝撃発言に、尚のことストーカーは青ざめていく。鼓は、ストーカーは付き纏った後、殴ったり蹴ったりするものだと思っている。
(嫌がらせにしては、何もしてこないな)
「な、なぐ...殴らないよ?」
「?...じゃあ、すとーかーってなんなの?」
「え…」
「ん…?」
急に言葉を詰まらせるストーカー。鼓は小首を傾げ、不思議そうな顔。その行動ですらストーカーからすれば煽られているように感じ、目を泳がせた。自分の容姿にあまり興味のない鼓の悪い癖だ。
「...あ、名前なんて言うの?すとーかーさん、じゃ言いづらい」
「名前...…言わなきゃダメかな?」
「だめ」
「俺、一応君のストーカーしてるんだけど。気持ち悪いとか思わないの?」
「だから、すとーかーってなに」
(なんか堂々巡りでイライラしてきた。さっさと言えよもじゃもじゃ頭)
鼓が苛立ち始め、その気を感じ取ったストーカーは焦って説明しだす。
「ストーカーってのは...その人が好きすぎて好きすぎて、思わずあと付けちゃうって事なんだけど。好きだから殴るのも蹴るのもしないよ」
(…...…つまり、一方的な片思い。しかも拗らせバージョン)
「嫌がらせじゃ、ないの?」
「うん」
「殴らないの、蹴らないの」
「もちろん」
「...俺のこと、好きなの?」
「うん......…好きだよ」
なーんだ。と鼓はぴょんと机から飛び降りる。次に、食べ終わったゴミの入った袋を手に取り生徒会室のドアに手をかけた。
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