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出会いは少女マンガのようなものではなく8
校内の適当なゴミ箱にゴミを押入れ、鼓は自教室に向かう。
ストーカーのことを考えてみたところ、付き合ってくれとも言われてないことを思い出す。これでは返事も糞もないじゃん、あのすとーかーどうしたいの?と悩む。
(...…好きって何?あれかな…この間、痴漢していた男が言ってた「好き」と一緒なのかな。だったら、好きにならないでくださいって言わなきゃ)
数日前、出掛け先で鼓は痴漢されている。その時、鼓の見た目が気に入り好きになったという痴漢に、鼓は良心から、自分の腹黒さを耳元で囁いた。
『僕の見た目だけぇ?中身も知らないで好きだ?馬鹿なの?阿呆なの?見た目がいいからって中身までいい子だとは限らないんだよ。その禿頭でよく僕に近づこうと思ったよね?出直してきてよ、キモい』
そう言って、鼓は颯爽と電車を降りた。それ以来、痴漢は鼓を見ると顔を青ざめさせ逃げていく。
丁重にお断りするはずだったのに、なぜか青ざめさせてしまった...と鼓は反省していたが。
どう考えても論点が違うだろう。問題は暴言の数々についてだ。鼓はどこかずれている。
そうして鼓が教室に着くと鷲野はおらず、弁当組が教室に残っているだけだった。これならばクラスメイト(仮)に聞けると意気込む。
「ねえ、聞いていいかな?」
クラスメイト(仮)に聞こうとして、
「鼓くんが僕達になにが聞くだなんて珍しいね。どうしたの?」
「あのさ......」
聞こうとして、固まった。
(...まって、すとーかーさん、他の人にはバレたくないよね。じゃあ、好きについてって…いやこれこそおかしい。鼓くん好きな人出来たの?とか聞かれたら鬱陶しい、めんどくさい)
悩む鼓、訝しげなクラスメイト(仮)。間が開きすぎると、不審がられることを危惧した結果、鼓は
「あ、のさ…茶髪でワカメヘアーの黒縁メガネの人知ってる?」
変な方向に質問を変えてしまった。
はずだが、クラスメイト(仮)たちは不思議がることなく鼓の質問に答える。
クラスメイトA「茶髪ワカメヘアー、黒縁メガネといったら、有名だよ?生徒会長の氷川 遼介先輩」
クラスメイトB「鼓くんは1年のとき、代表挨拶したあとどっか言っちゃったから知らないだろうけど、氷川先輩は在校生代表挨拶してたよ」
クラスメイトC「あと、氷川グループのおぼっちゃまだ。それにこの学校で1番の―――イケメンって言われてる。いつもは前髪下ろしてるからイケメンに見えないけどな」
「…へぇ、そうなんだ。ありがとう」
鼓の頬がひくつく。その理由は簡単。
(…生徒会長、それも大富豪。......やだ、関わり合いたくない)
鼓が夢ノ内に入る時決意したのは、「絶対1番上の権力者とは関わらない」だった。じゃないと、後々めんどくさくなるからだ。
(...でもすとーかーさんはいまももしかしたら後ろでこの話聞いてるのかも)
さすがの鼓も危機感を覚えた。
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