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お見合い会場はこちら4
下着妥協したからせめて靴下を、などとおぞましいことを言う遼介を放って鼓は自室に入った。
そして即座に引き戸につっかえ棒をし入れないようにする。
そして鼓は微かに笑った。鼓が途中まで眠りかけだったのは本当だ。しかし、あくまでも途中までの話だ。鼓は遼介を試したのである。
(好きだ好きだって言ってるけど...ちょっとでも俺の悪い部分見たら幻滅する人もいるからね)
高校に入って鼓に言い寄る輩がいた。その時も鼓はこうして自分の腹黒い所をわざと出し、試したことがある。
結果は―最悪だった。鼓の見た目に惹かれたと言っていただけあって、鼓が口悪く罵ったりすると顔を歪ませ「想像と違う」と言いがかりをつけた。
『俺に理想を押し付けないでくれる?』
酷く冷たい目で睨みつけ、その場を去った鼓は、それ以来一切自分の内を出すのをやめた。
その生徒が鷲野だというのは、後に話すことになるだろう。
(靴下、本気で盗まれそう。今日はお風呂諦めた方がいいかな)
鼓は欠伸をしないがら着替えていく。ジャケットを脱ぎ、セーターを脱ぎ、シャツに手をかけ―
「先輩見ないでください」
そう言い捨てた。鼓の前の姿見には、どうやったのかつっかえ棒を外し。覗こうとする遼介がいた。
「...ばれた?」
「どうやってつっかえ外したのか知りませんが…俺にだって羞恥心があるんです。脱ぐところ見るのはダメです」
「……...靴下」
「もうっ」
鼓が戸を開けぽいっとリビングの中央に丸まった靴下を投げた。すると餌に群がるハイエナの如く遼介はそれにかけていく。
(...そこまで、するか)
靴下に頬ずりし始めた遼介。さすがの鼓も気持ち悪いと思うはずだ。
(そこまで...する程、俺のこと好きなんだ)
どうやら、的が外れたようだ。
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