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土曜日と日曜日と月曜日のお話8

遼介はなんのことか瞬時に察したらしく、肩を揺らす。 「...何のことかな」 知らばっくれる遼介に畳み掛けるように鼓が問いかけた。 「とぼけないでください。先輩が風景写真だけ撮ってるだなんて有り得ません。...さっさと例のブツ出してください」 例のブツ、とはまた物騒な物言いだ。それでも尚遼介は首を傾げ知らないふりをする。 その(かん)、鼓はずっと笑顔だ。 「さっさと―俺の写真出してください」 容姿が容姿だけに、鼓の笑顔には破壊力がある。遼介は眩しいものを見るかのように目を細めた。 「......持ってません」 「あれ?生徒会室で盗撮写真見て微笑んでたのは誰でしたっけ」 「ぐっ...」 「別に責めてるわけじゃないです。純粋に見たいだけですから」 うううううぅ......と唸り声を上げ、さらに頭を抱え、さらにさらにはぁ...と溜息をつき、とうとう遼介は折れた。 「...引く量、持ってくるから」 最後にそう警告して、風景写真のアルバムと共に部屋に消える。 (いつから、すとーかーしてるんだろう。じゃないとその量集まらないもんね) ダンボール箱3個を、(部屋の中なのに)台車に乗せ、遼介は現れた。なんとも重そうな箱である。 「...なんですか、それ?」 「アルバム」 「...それ、1箱に何冊入ってるんですか」 「10」 単純計算、ダンボール箱(3個)×その中のアルバム(10冊)=30冊。 (これは.........) 鼓もさすがに引いたのか無言になる。無言の時間が長くなればなるほど、遼介は生徒会室で寝ていた自分を恨んだ。 「先輩は、俺以外を盗撮とかした事ありますか」 神妙な面持ちで聞くと心外だなと遼介は怒ったように言う。 「ありえない。後にも先にも、こんなことするのはつーくん...鼓だけだよ」 「...それを聞いて、安心しました」 先程の固まった笑顔ではなく、心からの笑みを浮かべる。 「好きなのはつーくんだけだよ」 「それならいいんです。こんなのほかの人にもしてたと思ったら.....................嫌だから」 (風景写真しか撮らないはずの先輩が、俺だけのために写真を撮るなんて......なんでだろ、ずっごい優越感がある) なんて恋人らしく甘い会話だろうか。 しかし、まだこの2人、付き合っていない。

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