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土曜日と日曜日と月曜日のお話11
出ようと鼓が腰をあげるも、ノックしてきた人は勝手にガチャりと部屋に入ってきた。
その人物は廊下を突き進み、リビングのアルバム大鑑賞祭に飛び入り参加を果たす。
「なにをしていらっしゃるのですか」
スキンヘッドにサングラス、ごつい体に黒いスーツ。頬には大きめの切り傷が張り付いていた。この人間、堅気かヤクザか。
「え、つーくんの写真集見てるんだけど」
「ご本人が目の前にいらっしゃるのにですか」
「それがね、聞いてよ八九座 」
(ヤクザ?!)
八九座 と聞いて別のヤクザを思い浮かべた鼓を放って話はどんどんと進む。
「ストーカー行為全般認めてくれたよ」
「盗撮も?窃盗もですか?」
「窃盗言うな。...うん、それ含めてぜんぶいいよって」
八九座がこっちを見る。サングラスがかけられているせいで睨まれている感覚になり無意識のうちにソファーから立ち上がってお辞儀していた。
「...つーくん、八九座にそんなことしなくていいから」
「ヤクザにそんなこと...って。先輩はバックにヤクザついてたんですか」
顔が青ざめ始めると遼介がようやっと、鼓が違う意味のヤクザを思い浮かべていることに気づいた。
「違うよ、そっちのヤクザじゃない。八九座ってのは、苗字なんだ。漢字の八、九に、座ると書いて八九座」
なんと紛らわしい名前だろうか。鼓がゆっくりお辞儀の体制からもどると、逆に八九座が90度に腰を曲げた。
鼓がまた固まる。
「どうも、氷川 遼介様のボディーガードと執事をやっている八九座 賢一郎と言います。以後お見知りおきを」
(ボディーガード兼執事の八九座さん)
あまりにインパクトのある体と名前のせいで、すぐに鼓の頭の中に八九座はインプットされた。
「それで、八九座。俺とつーくんの秘密の花園ならぬ愛の巣にカチコミに来た理由は?」
「遼介さん、鼓様の顔を見ながらそのこともう一度仰ってください」
?と遼介が鼓を見る。鼓は顔を真っ赤な染めいまにも遼介を打 つ勢いで手を振り上げぷるぷると震えていた。
(恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。なにそれ、くさすぎるでしょ。秘密の花園?愛の巣?言ってることがキザすぎてこっちが赤くなるでしょ!)
振り上げた手が遼介の頬に触れそうになった時。
「...つーくん、叩いていいよ。つーくんに叩かれるなら本望だよ」
遼介の言葉により、鼓はピタリ。動きを止める。すっ...と手を下ろす鼓の表情は無になっていた。
「......遼介さん、嫌われますよ」
「つーくんはこれくらいの愛が必要なの!」
「だとしても叩かれたいは変態のする事かと」
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