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土曜日と日曜日と月曜日のお話14
(「つーくんのお願いでも...それは、ちょっと。ごめんね...やっぱりイメージと全然違う。なにも言わずにストーカーしてた頃の方がよかった...かな」...ほら、早く言えよ)
昏い考えを、鼓は遼介に睨みつけることで伝えた。突き飛ばせ、とも。
だが遼介は鼓の意に反して、鼓の片腕を引き腰を抱き抱えた。腕は頭上に持ち上げられ、さながらダンスをするような格好だ。
「出来るよ」
「...うそ」
「出来る。それがつーくんのお願いなら、もちろん...俺は、そいつらを殺すよ。
...勘違いしないでね、俺はつーくんのこと、好きじゃないんだ」
ワカメヘアーの隙間から遼介の真っ直ぐな視線が鼓に突き刺さる。持たれている腕が、熱い。
「つーくんのことは、愛してるんだ。好きなんてそんな簡単な言葉(点符)で表せない、表せさせない。つーくんがお願いしたら、俺はなんでもやってのけるよ」
普通なら、こんなことは言わないだろう。人を殺せる、などいとも簡単に......。だが遼介は違う。鼓に自分の愛を信じてもらいたいが故に、何でもやってのける。
例えそれが法に裁かれるようなものだとしても。
みるみるうちに鼓の頬が紅潮する。
「ふふ...っ」
「俺の権力 は全部つーくんのためにあるんだよ」
「仕方ないから、許してあげます...ふふ」
「ありがとう」
遼介の答えにかなり満足したらしく、にこやかにソファーに戻る。
狂気的な場面に遭遇した八九座は言葉を失い立ったまま固まっていた。八九座の経験上、これ程までに遼介がなにかに固執したことなどない。
...事がバレれてしつこく詰問されれば遼介も面倒くさくなり、早々に諦めるだろうと思っていたが、どうやら今までとは違うらしい、と八九座は考えを改めた。
「申し訳ございませんでした」
「八九座。今回はつーくんの機嫌も直ったし許すけど...次言ったら沈める」
(でかい人からの謝罪ってなんか怖い)
鼓は八九座から目を逸らした。
「じゃあ、話は戻るけど。みやび荘でそんな噂流したの誰か検討ついてるの?」
八九座は少し逡巡した後、ついていますと言った。下手に言うと噂を流した奴に遼介自ら手を下すと思ったからだろう。
実際、遼介はそれを出来るだけの権力がある。
「ふーん...後で回しといて。あと、鍵師はすぐ来るんだよね?」
「部屋の前に待たせています」
「呼んで」
八九座は報告が終わったことに伴い、失礼しますと出ていった。
代わりに鍵屋が入ってきた。
(え、鍵屋?)
鼓がそう思うのも無理はない。鍵屋、の筈だがピシッとスーツを着こなした政治家のような男が入ってきたからだ。
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