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土曜日と日曜日と月曜日のお話18
鼓的には優しく言ったつもりなのだが、なにぶん気がたっているため、結果的に男の怒りを誘う形になってしまった。
「おまえぇ...!!!」
「うぁっっ」
男は我を忘れ、飛びかかる。ごん、と鈍い音が室内に響く。鼓は床に叩きつけられていた。
(いった......ほんとに、痛い.........)
鼓が痛みに悶える暇も与えず男は鼓の服に手をかけた。鼓の警告は聞こえなかったらしい。
「乗っかればこっちの勝ちなんだ...へへ」
(あー...馬鹿だ、こいつ。すぐ先輩来るのに、馬鹿じゃん)
「抵抗しないのか?あ?」
「する前に先輩来るから」
「くそっ...!やれれば俺は何だっていいんだ!」
「ふぅん...」
(もうちょっとしたら来るかな)
そうして、呑気に遼介を待つ鼓は.........だんだんと、焦り出した。
待ってみても遼介はなかなか来ないのだ。
(あれ、来ない。これやばいのかな。啖呵切っておいてあれだけど、まずい?)
脱がせるのがめんどくさかったのか、男に服を引きちぎられた辺りで鼓は不安になり始めたのだ。
「お前の言う先輩来ないなぁ?どうするんだ?もう服脱がせたけど?」
「っ」
「おい?じっとしてろよ」
「や、だっ」
本格的にまずいと感じ鼓は体を捩った。
「いやっ」
「ははっ、嫌がる姿も中々じゃねぇか」
「せ、んぱい...っ先輩、助けて!先輩!」
「黙れ!」
最後の頼みの綱だ、と大声で鼓は叫んだ。戸を挟み、更には部屋の外にいる遼介に聞こえるわけが―
「はーい、つーくんどうしたの?」
聞こえた、ようだ。それに声は部屋の前からで、すぐ近くにいることが分かる。
「先輩助けてっ」
「うん、もちろん。俺はつーくんの騎士 だからね、そいつのこと殺すことくらい出来るよ」
(殺す......って)
男は遼介の声が聞こえたことで動揺し鼓の口を塞いだ。今さらこんなことをしても意味は無いというのに。
「怖い?それでもつーくんのためならなんだってできるよ」
「...」
「つーくん、助けて欲しい?」
鼓は、喋れない。ただ、思う。
(助けて)
「分かった、助けるね」
なのに、遼介は鼓の思ったことを的確に捉えた。
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