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土曜日と日曜日と月曜日のお話19
「怖かった...」
「だね、服剥がれて。可哀想に」
(いやあなたも十二分に怖かったですけど。あとなんですぐ来なかったの)
あのあと、遼介は戸のついたてを外し(どうやるんだ)部屋に入ってきて―男を蹴り上げた。無表情で。
続いて去ったはずの八九座が部屋に入ってきて、怯える男にのしかかり襟首を締め上げながら数度殴りつける。そして男がぐったりしたのを見計らい、戸惑いもなく男のソコを踏みつけた。
絶叫する男のソレ無表情で更に強く踏み―あとは、言わない方が身のためかもしれない。
その間、鼓は遼介に眼鏡を外され目を塞がれていたため、なぜ男が叫んだのか分からずじまいだ。
ただ、遼介が自分のために、一生人など殴るはずのない手を振りかざしてくれたことに喜びを感じていた。
「先輩、今日のこと恨みますよ」
「ごめんねつーくん。質のいい鍵屋って言ったんだけど、今日馴染みの奴が来れないって言ってきてね。代わりに弟子を寄越すって話になったんだ。俺も見たことなかったけど、信頼のおける鍵屋だしその弟子も大丈夫かなって。でもそれが仇になっちゃったんだ。見たことなかったから、入れ替わったことに気づかなった」
「入れ替わってた?」
「私が去った後のようです」
鼓の問に答えたのは八九座だ。先程まで八九座は男を縛り上げていたのだが、どうやら終わったようだ。
「私がここのホールに連れてきた時は全く違う人物だったためその時点で入れ替わったのかと」
「へぇ。で、あいつは誰?」
あいつ、と呼ばれた男はここにはいない。八九座が縛ったあと取り敢えずということで洗面所に放りこんだからだ。
「…この学校の、事務員だそうです」
「つーくん知ってる?」
「見たこともないです」
そうだよねぇと遼介は鼓の髪を梳く。ちなみに、鼓はソファーに座った遼介の股の間に座らされている。
大人しく座っている鼓の腹には遼介の手が回っており、逃げたくても逃げれないのが現実だ。
「つーくんごめんね?」
「.........それより、先輩手は大丈夫ですか?」
手?と遼介は自分の手を見る。
「大丈夫だよ」
「よかった、です。怪我してないか、心配で」
「つ、つーくん...っ」
感極まり萌え死にそうな遼介。鼓は単純に心配しただけなので、後ろで苦しそうな声を出しながら髪に鼻を埋める遼介が不思議で仕方なかった。
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