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土曜日と日曜日と月曜日のお話21

怒鳴り声、ドアを激しく叩く音、ドアノブを回す奇怪音。 遼介が何事かと起き上がる中、鼓は布団を頭まで被って縮こまっていた。 「つーくん?」 不審に思った遼介が布団を捲ろうとすると、がん!と一段と凄い勢いでドアが蹴られ布団の塊がびくっと揺れた。―怯えている。 布団から引っ張り出すのは良策ではないと考えその上から抱きしめる。その身体は震えていた。 昨夜遼介は言ったのだ、昨日のようなことはもうないと。鼓だって、毎日の嫌がらせに辟易していたはずなのに今日のこの仕打ち。 かなり、まいってしまっている。 「つーくん落ち着いて...鼓」 何度も何度も布団の上から摩っていると、少し落ち着いてきたようだ。 「...せんぱい」 「ちょっと、見てくるから。待ってて?」 ひょっこりと顔を出し上目遣いの鼓に思わず理性が飛びそうになるが、耐え抜き部屋を出た。 (...ホラーかよ) 音だけでなくノブの動きもあり、実際に見てみるとそれは結構なホラー演出だった。 (つーくんにこんな嫌な思いさせるのはだーれだ) 多少の殺気を纏わせて遼介は玄関のドアを開けた。 「!」 「なに、してるの?」 「おはようございます氷川先輩!」 「先輩助けに来ました!」 「氷川、もう大丈夫だぞ!」 「ほら逃げるんだ!」 各々で伸ばされる腕と勝手自分な言い分に目眩がした。 (噂に尾ひれがついたか) 八九座が言っていたことを思い出す。 『鼓様が遼介さんを誘惑した、遼介さんはなにか弱みを握られているかもしれない、助けなければ……等々』 (つーくん、この問題児め…) あくまで優しく集まった数名に微笑みかける。 「どうしたの?」 語尾が強くなってしまうのは仕方がない諦めろと心で訴えた。 以下馬鹿が最初についた状態でお送りいたします。 馬鹿A「昨日涼川が先輩の弱みを握み無理やり同居に乗り切ったって聞きました」 馬鹿B「それで昨日は、涼川と付き合ってるって言われてた用務員さんがそれを聞いて逆上して、修羅場になったって」 馬鹿C「仕方なく先輩がそれを追い払って、用務員には休暇を与えたって聞いたぞ」 馬鹿D「大丈夫だ、弱みを握るような奴コテンパンにしてしまえ!お前なら大丈夫だ!」 誤解の数々に遼介は思わず心の中で叫ぶ。 (……問題児め!)

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