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土曜日と日曜日と月曜日のお話23 鼓視点
鼓視点
酷い悪夢を見ていた。
寒い日の夜に、ベランダに追い出されて、見兼ねた隣人が助けてくれる夢。
そのあと、俺の家の人が息子を返せとドアを蹴りつけて何度もノブを回して―
夢と現実の境目でうっすら目を開けると、確かにその音は鳴っていた。怒鳴り声、ドアを激しく叩く音、ドアノブを回す奇怪音。全部、夢と同じ。
わけが分からなくなって、前みたいに頭から布団を被って逃げた。誰かが声をかけてきて、それが誰かも分からなかった。
やっと落ち着いてきたら、ここは現実であの場所じゃないってことが理解できた。
目の前で優しく声をかけ布団の上から摩ってくれていたのが先輩だと気づくと、なんとも言えない気持ちが溢れそうになる。
ちょっと見てくるから待ってて?と先輩が消えて部屋に1人。
自分でもなんでこんなに怯えているのか分からない。ここはあの場所じゃないのに、夢にまで見てしまった。
いや、毎夜毎夜見てたけどここまで酷くなかった。きっと疲れが溜まっていたんだろうと結論付ける。
ふと気づけば喧騒はなくなっている。先輩が玄関で対応しているようで、微かな話し声が聞こえた。
当事者が居なくてどうやって解決するんだ、とまだ働かない頭に布団を被せて玄関に行くと、
ドアが閉じられていた。
聞かせたくない話でもあったのだろうか。
恐る恐る、悪い気はしたけどそっとドアに耳を着けた。
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