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土曜日と日曜日と月曜日のお話25

鼓がドアの内側で竦み上がる中、遼介はにっこりと、それはもう、とびっきりの笑顔を貼り付けた。 「―帰って、くれるかな」 周りが、固まる。 語尾にクエスチョンマークがついていないのは、帰ってほしいという希望ではなく帰れという強要だからだ。 ドアが凹まされたことで固まっていた馬鹿たちは、ようやく自体を把握し焦り出す。 馬鹿「ほんとにいいのかよ!」 馬鹿「いまなら逃げ出せるだろ、なんでっ」 馬鹿「そんなに話しづらいないようなんですか?」 ※遼介の意向によりA〜Dの馬鹿は一括りに纏められました。 「さっきから言ってるよね?俺別に弱みなんて握られてないって。監視役も受け持ってない。それに、ここでつーくんの過去を持ち出すのはちょっと違うんじゃないかな?」 これだけ苛立っていても笑顔で体制を守れているのは、やはり"氷川"だからだろう。上に立つ人間だからこそ、常に自分の感情に関係なく接しなければいけない。そう、教え込まれているのだ。 騒ぎ立てる馬鹿たちが音をかき消してくれることをいい事に、遼介はコンコンとドアをノックした。 中に鼓がいることに気づいたようだ。 そのノックの意味は 『大丈夫だよ』 「...」 ゴン、と1回ノックらしきが返ってくる。そして遼介にだけ聞こえる小さな声も。 『早く追い払って』 「ぷっ…」 鼓らしい返答に、遼介は思わず吹き出した。

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