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土曜日と日曜日と月曜日のお話31
「うん、どうぞ。明日俺にも嵌めてね?」
そういって、懐に黒い箱をしまってしまう。
指輪は角度を変えると違う色に見える特殊なダイヤを使っているようで、鼓は廊下の蛍光灯の光に当てながらにやけてしまっていた。
だが、現実に引き戻された。
「待って、結婚式とか早すぎですよ」
「え?普通じゃない?」
「いや、もっとこう2人で決め合って...」
鼓のイメージでは2人でプランを考えて誰を呼ぶか決めて...というような一般的な結婚式の決め方が浮かんでいた。
ここで金持ちと庶民の差が出るのかと落胆する。すぐに結婚式場を押さえれるなどおかしいだろう、と。
「そっか、除け者にされたくなかったんだね!分かった、今から結婚式場行こう。そこで決めよう!」
(なんでそうなる?!)
「ち、違くて!それに明日学校!」
今日は日曜日である。ちなみに夢ノ内は土曜日は学校があったりなかったりする。
「硬いなぁ、つーくんは。ちゃんと考えてるよ?明日は学校休みにするから、大丈夫」
「なにが大丈夫なの?!」
思わず敬語を忘れて叫ぶ。
結婚式を挙げることはもう決定事項なのか、遼介は電話を取り出し耳に当てていた。それを止めようとする鼓。まるで押し問答のようだ。
いや、もうプロポーズをし夫婦(?)だから痴話喧嘩の域なのか?
「だって、今日は日曜日でしょう?今日を俺とつーくんの付き合った日で祝日にする、つまり、日曜日の祝日は?」
「……次の日おやすみ」
「さすがつーくん。偉い、賢い。これで学校の心配はなくなったね」
(まさかこの人…祝日作る気?!)
頭を撫でられようと、鼓は引き攣った笑みを浮かべるだけである。
祝日を作るなど1日で出来るものでないし、まず、作れるかどうかも分からないのだ。そこを捻じ曲げるなど、金持ちというだけで出来る代物ではない。バックに誰か付いているのか。
くん、と急に腕を引っ張られ鼓は困惑した。ちら、と見上げる。
「だから今すぐ見に行こー!」
「ぇぇええええ!」
(そんな気はしてたけど、今から?!何言ってんだこの人は!)
遼介は勝手知らずか満面の笑みだ。
引っ張られるまま部屋に戻り、本気で八九座に電話しようとするびっくり人間を、鼓はアルバム捨てるという脅しで止めたのだった。
ちなみに指輪の値段は、0が7個付いていたという...。
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