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土曜日と日曜日と月曜日のお話36
教室の前まで来ようとしていた遼介を追い払う。
「帰りにまた来るから。絶対待ってて」
名残惜しそうに去っていく姿に、胸が痛む気がしたのは気のせいだと言い聞かせた。
(教室入りたくない)
いざ戸に近づいてみるも、勢いがなくなり非常に入りづらい。いくら上辺だけといっても一応は友達だ。いきなり冷たい目で見られるのはやはりいい気持ちでは無い。
(先輩連れてきてもよかったかな...いや、だめ。これは俺の問題だし)
ここでうだうだしていても埒が明かない、と鼓は思い切って教室に入った。
「...」
予想通り、と言うべきか。誰一人として鼓の方を見ない。
(うっわぁ...)
ここまで予想通りだと逆に笑える。
(上辺ですらなくなったの?それとも鷲野になんか言われた?)
嘲笑したくなるのを抑え自分の席に座った。目線はひとつとして鼓を見ることはなく、まるで空気になったような気分だ。
(さっき先輩があんなことしたから、余計に大変なことになったんだよな)
と言うより、ストーカーだとばれても開き直り引っ越してきて付き合ってくれというのが問題なのだ。ストーカーはもう少し慎ましやかだと思っていたのに。
授業の用意をしながら、鼓は文句を(毒を)吐いていた。
(俺が気味悪がってたらどうするつもりだったの?先輩って本当にすとーかーぽくない。だって、普通に目の前で好きとか言ってくるし、付き合ってとか...結局付き合うとこになったけど)
無視されることは慣れているからこそ、ずっと1人で喋り続けられる。
鞄からチョコの箱取り出し、口に放り込んだ。
(……ん?ちょっと待って。俺のこと中学の頃から知ってたなら、俺の嫌がらせのことだって知ってるよね?なんで何も言ってこなかったんだ?)
硬いチョコを、鼓は歯で噛み砕いた。バキ、バキバキと音が出る。
(本当に、俺のこと好きなの?)
不信感が高まりさらに口にチョコを入れ噛み砕いていると、放送がなった。
『緊急朝礼を始めます。生徒の皆さんは至急講堂にお集まりください』
(…?)
「おはようございます、みなさん。この朝礼が終わり次第帰れます」
禿げかかった校長が、いつもの長い話もせずに言う。生徒は喜び半分(すぐかえれるということもあるが、校長の長い話がないという嬉しさもある)、ざわめき半分といったところだ。
「えー...生徒会長よりお話がありますので」
(あ、先輩だ)
演台の前に立ち前をまっすぐ見つめる姿は、やはり上に立つ者といった風格があった。
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