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閑話 配達員さん。1
「...?」
少し前のこと。ドアの前に、小箱が置いてあったことがあった。
手紙も付いていて、それに「涼川 鼓 くんへ」って書いてあったから俺のなんだって気づいた。
赤いリボンのしてある可愛らしい箱。揺らしてみると、ガサゴソと音がする。
―また嫌がらせの類だろうか。
「はぁ...」
そう思って、すぐに外に捨てれるように窓辺に移動して箱を開けた。
「え...」
中身は、俺の好きなクッキーだった。チョコチップクッキー。それも、あの有名な店のクッキーだ。
「...誰だろ」
不思議に思いながらも、部屋に持ち帰って食べた。毒が入ってるとかその辺は考えてなかったと思う。
―美味しかった。
次の日、帰ってみたらまた小箱が置いてあった。中身はやっぱりクッキーで。
次の日も置いてあった。
その次の日も、
そのまた次の日も、
そのまたまた次の日も―。
なにも、変に感じなかった訳でない。ただ、たまにいるから、こういう人。ここは男子校だし、男にプレゼントなんて周りを気にして出来ないって人が、こうやって置いていくんだ。
だから素直にクッキーを食べて、いつか鉢合わせでもした時にいつもありがとうって言うつもりだった。
それは、唐突にやってきた。
その日は体調が悪くて、早退したんだ。
すると、部屋の前に青い服を着た配達員らしき人が小箱を置いているのを見かけた。
「あの」
思い切って声をかけると、余程びっくりしたのか飛び上がってしまう。
「それ、あなたが置いてくれてるんですか?」
ゆっくり振り返った人は、帽子を目深に被っていて顔まで分からなかった。
「...違いますよ、俺は届けているだけですから」
小さな声で淡々と言われ、残念、と思った。
「そうですか。いつもありがとうってお礼言いたいのになぁ...」
俺がそう言うと、配達員は何故か嬉しそうにその場を立ち去った。
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