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月曜の婚約発表会1

『はぁあああ〜〜〜〜〜〜〜?!?!』 困惑のどよめき。教師陣ですら叫んだ。もちろん例に漏れず鼓も心の中で大きく叫んだ。 (待て。婚約したとか言ってない、誤報だから!いやでも婚約指輪も結婚指輪ももらって…ってそうじゃなああぁぁぁぁい!!!) 思わず立ち上がり遼介の元へ行って掴みかかり―― そんなことは流石にできず、とりあえず鼓はガッチガチに固まった。 「今日集まってもらった理由は、婚約を発表するためなんだ」 これがこの間馬鹿4人組が来た時に遼介が考えていたサプライズー婚約発表なのだろう。なんと大々的なことか。 (やめて、ほんっ…とにやめて。この痛い視線気づかないかな?!) 今すぐにダッシュで逃げ出したい気持ちを押さえつけ、冷静になろうと心掛ける。 まず、一端状況を整理しよう。俺と先輩は既に噂になっていて、自体を収めようとした先輩は収めようとしてなくて、むしろ婚約発表とかめちゃくちゃなことして噂もクソもな― (…むり、俺も声に出して叫びたい) 眼鏡が汚れるのも気にせず、鼓は顔を覆った。 …鼓の胃が、そろそろ限界を迎えそうになっている。鼓の「平穏に過ごしたい」は叶いそうにない。 「少し前からアプローチ(ストーカー)していて、昨日ようやく婚約を受け入れて貰いました」 遼介は照れたように笑い、鼓を見る。アプローチがストーカーすることなのはおかしいだろうに、遼介は気にもとめない。 それどころか、項垂れる姿に向かって、つーくん可愛いつーくん可愛いつーくん可愛いつーくん可愛いつーくん可愛いつーくん可愛((ryと念を送り続けた。 その不気味な念が届いたのか、鼓が顔を上げる。 (…なんか、つーくん可愛いって聞こえた) どうやらしっかり届いていたらしい。もやはエスパー、否化け物。 「さて、ここに婚約者が居ないのもおかしいので連れて来ようかな」 そして、遼介はひらりと舞台を降り鼓に近づいた。 (ぎゃあああっ) 脱兎の如く、鼓は席を立って逃げ出そうとしたがいとも簡単に遼介に捕まった。 「こらこら、逃げないの」 遼介はそのまま鼓をお姫様抱っこをする。 「降ろしてッ」 「ふふ、顔真っ赤…可愛い」 「婚約発表会とか聞いてない!」 決死の抵抗で暴れるも遼介の力には勝てない。 「昨日つーくんと付き合うより前に決めてたからね、知らなくて当然。つーくん…俺は付き合っても付き合わなくてもこれをする予定だったんだよ。こうやって外堀固めて、地盤作って俺から逃げられないようにするために…」 にっこり笑いながら言うそれはかなりの恐怖発言であるが…まぁ予想通りと言うべきか、鼓はきゅんとしたようである。その証拠にだっこの恥ずかしさではなく、嬉しさで頬が紅潮している。 「そうそう、発表会する理由は、みんなに近づくなって言うため。俺のつーくんだからねって、触らないでねって。いじめたら消すよって」 「そこまでするんですか?!」 「だって、つーくんのこと愛してるから」 そして不意打ちの攻撃は見事にクリーンヒットし鼓を黙らせてしまった。 「婚約してません…」 「指輪つけた時点でもう婚約したと同じだよ」

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