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月曜の婚約発表会3
「それは、どういう意味かな」
隣に座っている鼓にだけ分かる、遼介の声の温度が下がったことが。
『涼川と婚約するなんて、氷川さんの名に傷がつかないかとしんぱ「ありえないかな」…』
生徒の言葉に被せて否定する。
「鼓くんの評価が低いことは知ってるけど、ここまで来てまだ蹴落とす気なら、それは氷川への愚弄として取れるけど…いいの?」
『っ』
(まぁ、ここまで低評価されるほどやらかしてきたのは俺だから、なんとも言えないよね。権力如きで成り上がった先輩方より好成績を残そうと思います、だっけ。
…まぁ言い過ぎたなんて思わないけど)
やばい、と青ざめる生徒に対し、ただただ腹黒い鼓である。
生徒は失礼致しましたと慌てて座り沈黙を守った。一気に静かになった会場(講堂)に、遼介は質問はもうないかな?と確認する。1人、手を挙げた。
『失礼します。相手に伝えたいことはありますか?』
「...じゃあ最後に、俺から鼓くんに言いたいことがあります」
遼介が椅子から腰を上げテーブルをコンコンと叩くと教師がそれを退けた。まるで黒子役割をしているような感じだ。
鼓の座る椅子ごとを90分度回転させ、足元に跪く。
「つーくん、足出して」
「...は」
突拍子のない発言に、とうとうおかしくなったのかなと失礼極まりないことを思う。
「靴脱いで、靴下脱いで?」
「……は?」
こんなところで変態を晒すのか、と突然言われたことに鼓は動揺した。そして遼介の首元にはピンマイクがもとよりつけられており、話声は講堂中響き渡っていた。あながち鼓も思っていることは間違いではない。
いまから遼介は自身の変態さを晒すこととなる。
「なんか変なこと考えてそうだけど違うから。ほら、脱いで〜」
「…盗りませんか」
「さすがにここではしないよ。俺にもプライドってものが……やっぱりください」
大人しく頭を下げる。
(今言ってたプライドはどこいった)
鼓が睨 め付けた。
「俺の辞書にプライドなんてない」
「プライドを持って生きてくださいよ」
「靴下がダメなら下着で…」
「尚悪い!下着って変態くさい!何する気ですか!」
「な、舐めるのは諦めるから」
「舐めるの?!」
「あ、ちょ、…つーくん逃げないで」
思わず椅子を引いて逃げようとするが、遼介に足を捕まれあえなく失敗。
「ひ、ひひひひ、人の下着舐めようとか考えてた人と一緒にいたくないっ」
「俺のこと好きでしょ」
「...愛と恐怖は紙一重」
「つ、つーくん〜〜!!」
会場内(講堂内)が非常に気まずい雰囲気になったことを、このバカップルは知らない。
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