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そうして、現在の二人 3
遼介より先に食べ終えた鼓は(遼介の方が量は多いはずだが)割り箸を渡した。
割り箸にしているのには、わけがある。
「ん、ありがとうつーくん。ジップ○ック出してくれる?」
遼介が収集するためだ。どうしてもそんなものを欲しがるのか、鼓は理解できないようである。
遼介はわざわざ食事をストップし、使い捨てのゴム手袋を嵌めて、割り箸を鼓が取り出したジップ〇ックに入れた。
「はい、完了」
手早く処理を済ませまた食事を始める。手馴れた手つきを見る限り、常習犯。
「よく飽きませんね」
鼓は呆れではなく驚きで返した。
「つーくんのものは全部持っていたいから。本当はもっとエグいもの欲しいけど、引かれそうだからやめとく」
(逆に気になる)
「教えてください」
「だめ。引かれたら嫌だし」
「引きませんから」
「ダメだって。これだけは言えない」
頑なに拒まれると、さらに聞き出したい気持ちが募 る。普通に聞いてもきっと答えてはくれないだろうから、適当に候補を上げていくか、と鼓は要らぬ考えを巡らす。
(靴下...は、もう持ってる。昨日も渡した。下着は死守してるし。...多分。エグいもの?なんだろ...............あ)
「.........もしかして、尿欲しいとか?」
ふと思いついたことを口にしてみると。
「ぶっ...」
遼介がお茶を吹き出した。その顔には焦りが現れている。
(...まじか)
思わずじっと見つめると遼介は首が取れるのではないかという勢いで左右に振った。
「違う。違います、そんなの思ったことありません。裁判長、俺は無実です!」
「被告人に身の潔白を証明する術はありません。吹き出したお茶、焦った表情、そしてなにより急いで否定するところが1番怪しい」
茶番に乗る鼓。遼介はわざとらしく頭を掻きまして唸る。
「俺は、無実だ〜っ」
「有罪決定。トイレに入ってこないでくださいね」
遼介の吹き出したお茶をウェットティッシュで拭く。結構な飛び散りだ。
「カメラも取りはずなきゃだめ?」
「............割り箸返してもらえますか」
「ごめんなさい今すぐ外させて頂きますすみませんでした」
早口での謝罪に鼓はとうとう吹き出した。遼介もくすくす笑った。
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